労働者に対するメンタルヘルス対策の今
わが国の自殺者数は、2010年で3万1690人、1998年以降13年連続で年間3万人を超える(実際はこの数を大きく超える人数が自殺をしてしまっていると言われています。)という深刻な状況が続いています。このうち「勤務問題」を自殺の原因の1つとしているのは、約2600人に達しています。
勤務問題とは、主に職場でのストレスや過労で、非常に大きな社会的な問題として今でも日本に存在し続けています。
しかしながら、厚生労働省による平成19年労働者健康状況調査によれば、メンタルヘルス対策を真剣に取り組んでいる企業の割合は、33.6%と非常に低いものになっています。
厚生労働省では、こういったデータを元に2010年1月、「自殺・うつ病対策プロジェクトチーム」を設置し、企業向けとして「職場におけるメンタルヘルス対策・職場復帰支援の充実 〜一人一人大切にする職場づくりを進める〜」として重点的に対策を講じるようになってきました。この対策は、しっかり働くことができる環境を作っていこうということが大きな目的となっていて、少しずつ職場の環境を変えていこうとする「労働者の健康保持増進」の動きが出てきているのです。
しっかり働くというのは、仕事をするということだけでなく、心身の健康を考えることができるということが含まれています。特に精神的な症状が出始めた時に、いち早く気付けるようなことや、勤務問題などによって精神的に大きな負担がかからないように予防することが重要視されており、そのためにさまざまな努力や工夫をしていくことになります。企業独自の方法で行なったり、または外部の人が介入することで、働いている人の負担やストレスをチェックしていくようなことが多くなっています。また相談できるような機関との連携をもったり、相談できる場所を直接社内に充実させるなどの動きも積極的に出てくるようになっているようです。
しかしメンタルヘルスについて考えている場所と、そうでない場所の差が大きくある事も多く、一定の水準以上のメンタルヘルスケアをしていくというのはなかなか難しい場合が多いようです。
企業看護師への期待が高まる今
産業看護職(企業内看護師、産業保健師)は、労働者の身近な支援者として、メンタルヘルス対策の重要な役割を果たしています。
今後、予防、危機介入など様々なメンタルヘルス対策の中で、企業、保健所、保健センターなど様々な場所で活躍する産業看護師、産業医が連携してメンタルヘルス対策を講じていくことが期待されています。
産業看護職のメンタルヘルス対策における役割
看護師や保健師が企業に介入する事も多くなり、そのような職種の方が企業で働く事も決して珍しいことではなくなってきました。企業向けのメンタルケアを学んだカウンセラーなどの活躍も見られるようになり、職場での精神的な負担に気付きやすくなる要素はだんだんと増えてきていると言えるでしょう。
看護師として企業の医務室やメンタルヘルス支援センターのような場所で働きながらメンタルヘルスに関するスキルを身につけたり、産業カウンセラーなどの資格を取得する方が増えてきています。この先、看護師として働くには珍しい領域という見方をされることは少なくなってくるでしょう。
早期発見
日々の健康相談から、過労のチェックや、ストレスチェックをしたり、チェックシートを促すことで、早期の発見ができるように色々と工夫する必要があります。
早期発見は、企業の従業員の身近な存在である産業看護師、保健師の重要な役割のひとつです。
また、企業によっては健康推進部門を設けて、産業医、産業看護師、カウンセラーと連携してメンタルヘルス対策を講じているところもありますが、そういった企業はまだまだ少なく、一人の産業看護師の力にかかっていることが多いのです。
そのため、産業看護職はカウンセラーではありませんが、未然の予防・早期発見のために、カウンセリングの力、つまり「聴く力」を養っていくことも今後必要になっていくでしょう。
メンタルヘルス不調者への対策
メンタルヘルス不調者と判断された場合、その対象者に対し、休養の判断、休養の場合どれくらいの期間休養することを薦めるのか、本人・家族を含めた総合的なケアなどを行います。
また、休養をしてから職場復帰をスムーズに行えるように面接を行ったり、段階を踏んでいく必要があると言えます。